鎌倉時代末期、後醍醐天皇が流刑先の隠岐から脱出し、立てこもった場所が「船上山」。
そんな歴史の1ページに残る要害の地は、今もその姿をとどめています。
その山に、2023年5月9日(火)に実際に登山しましたので、ご紹介します。
船上山について
本記事冒頭で簡単に紹介したとおり、天皇方と幕府方の合戦の地となった船上山。
この合戦に勝利した天皇方は、その後、鎌倉幕府を打倒。
いわゆる「建武の中興」と呼ばれる天皇親政の時代を迎えます。
船上山は、その「建武の中興」発祥の地として国の史跡指定も受けています。
山の名前 | 船上山(せんじょうざん) |
標高 | 615m |
住所 | 鳥取県東伯郡琴浦町山川 |
登山口までのアクセス | 山陰自動車道「中山」ICから自動車で約20分 |
駐車場 | 東坂登山口の近くに10台程度あり(無料) |
トイレ | 山頂の休憩舎にあり |
登山口の駐車場の情報はこちら↓
駐車場名 | 船上山登山口展望駐車場(東坂登山口) |
住所 | 鳥取県東伯郡琴浦町山川 |
位置情報 | 県道34号線(大山環状道路)を西から走ると、「西坂登山口」「船上山北展望駐車場」の次にある駐車場 駐車場とはいうものの、路肩にある広い避難帯のようなものです 駐車場の向かいに東坂登山口と、その案内看板あり |
船上山の風景
2023年5月9日(火)、前週に梅雨のような雨が降ったものの、当日は晴れ。
友人とともに、中年男性2名で日本史に名を遺す山にトライ。
船上山登山口展望駐車場
自動車で日本海側から南下し、船上山へ。
道幅が狭く、蛇行する大山環状道路に少し恐怖を覚えつつ、まずは登山口駐車場を目指します。
しばし走り続けると、車道の左側に駐車できそうな空間と看板が。
ここが「船上山登山口展望駐車場」でした。
東坂登山口
登山口展望駐車場の駐車スペースから、車道を挟んで向かい側に登山口があります。
ここが「東坂登山口」。
「西坂登山口」もありますが、西坂には駐車スペースがほぼありません。
船上山にファーストアタックな我々は、東坂登山口からトライします。
屏風岩の断崖(絶景1)
東坂登山口から坂道を登り始めて、10分経たないうちに、さっそくの絶景がお出迎え。
「屏風岩」と呼ばれる絶壁を望むことができました。
山頂
東坂登山口から歩いて約40分。
滑りやすい固まった泥の坂道や、笹の葉に挟まれた山道を登ると、広々とした山頂エリアに到着。
休憩舎
山頂エリアには、2013年に整備された2階建ての休憩舎があります。
建物内はキレイで、トイレもあります。
ただし、ゴミ箱などはありませんので、ゴミは持ち帰りましょう。
休憩舎の2階の窓からの眺めは良好。
多少、モヤがかかったようになっていますが、日本海が望めます。
山頂エリアは木立に囲まれているため、この休憩舎からの眺望が最も「山頂からの眺め」っぽい、かなと。
石碑(船上山行宮之碑)
山頂エリアには、休憩舎の他に「船上山行宮之碑」と彫られた石碑がたたずんでいます。
「行宮(あんぐう)」とは、一時的な仮の宮殿のこと。
具体的には、後醍醐天皇が京都の御所を鎌倉幕府から取り戻すまでの、仮の宮をこの山に構えていたことを示します。
実際に「行宮」があったとされる場所は、この石碑とは異なる場所にあり、それは後述します。
千丈のぞき(絶景2)
山頂エリアには、「千丈のぞき」に通じる小道の入り口があります。
「千丈のぞき」とは、峡谷を挟んで滝が望める絶景ポイントのこと。
片道5分、距離にして10mほどの寄り道になりますが、道が険しいため、幼少の子や足腰に不安がある方は寄らない方が無難と思われます。
さて、急斜面を木の幹や枝を握りながら降りると、左右両面が断崖になっているスポットに出ました。
ここが「千丈のぞき」。
岩石と松の間から、対岸(?)の絶壁を流れ落ちる滝を望むことができました。
峡谷の向こうの滝は小さくも見えますが、流れ落ちる水音は、しっかりはっきりと聞こえてきます。
萌えいずる春の青い山々、覆い茂る松葉、鳥の声、響く水音……
あたかも、仙境の地に身を置いているような感覚です。
この後、一度降りてきた急斜面を登って、山頂エリアに戻りました。
山頂から船上神社へ
「千丈のぞき」で仙人気分を堪能した後、山腹の船上神社を目指します。
東坂登山道→山頂のときのような急な坂道はなく、なだらかな山道を行きます。
道の途中、石垣が組まれている部分があったりします。
これも歴史の一部なのか。
途中、西坂登山口からの登山道と合流しました。
船上神社
山道を歩き進むと、船上神社に到着。
まずは、一拝して鳥居をくぐらせていただきます。
鳥居をくぐると、手水舎と思しき建物がありましたが、石蓋がされていました。
手水舎の隣には大きな石碑がドンと構えていました。
詳細は分かりませんが、江戸時代末期の安政年間に奉じられた、漢文の石碑のようです。
拝殿にて、神様に御挨拶。二拝二拍手一拝。
それにしても、境内に狛犬さんがいらっしゃらないな。
拝殿の裏に位置する本殿にも一拝。
船上神社・奥の宮
船上神社・本殿の脇から、奥の宮に通じる道の入り口があります。
本殿から歩き進めて、約3分後。
奥の宮が見えてきました。
二拝二拍手一拝。奥におわす神様にも御挨拶。
後醍醐天皇行宮跡
「船上神社の本殿」と「奥の宮」を繋げる山道の間には、「後醍醐天皇行宮跡」があります。
この船上山合戦で鎌倉幕府勢に勝利後、後醍醐天皇はこの山に約80日滞在して政務を行ったと言います。
ただ、後醍醐天皇が滞在した宮殿(行宮)があった場所は特定できず、行宮があったとされる一帯をまとめて「行宮跡」とされています。
帰途(西坂登山道出合い→森林鉄道跡→東坂登山口)
「船上神社」と「行宮跡」で歴史に触れた後、帰途につきます。
まずは、船上神社境内から西坂登山口に通じる山道を歩きます。
次に、西坂登山道と東坂登山口に通じる道が交わるポイント(交差点)に出ます。
ここから、東坂登山口への道に乗り替えます。
前述の「交差点」から「東坂登山口」までの道は、かつてトロッコ道だったとのこと。
今は「森林鉄道跡」と呼ばれていると、ガイド本にあります。
なるほど、石積みの橋梁が山道として残っていて、往時をしのばせます。
しかし、かつての「森林鉄道」がなんだったかを説明する案内板などが現地にありません。
なにかしらの解説が欲しいな……と感じた次第です。
この後、無事に東坂登山口(出発地点)に出て、船上山の登山を完了することができました。
登山に要した時間
今回の登山の所要時間を報告します。
(パーティ編成は中年男性2名)
行動 | 時刻 | 所要時間 |
東坂登山口から登山開始 (→山頂) |
09:06 | |
山頂到達 | 09:43 | 37分 |
山頂散策 | 千丈のぞきでまったり | 32分 |
山頂出発 (→船上神社) |
10:15 | |
船上神社到達 | 10:24 | 9分 |
船上神社出発 (→奥の宮・行宮跡) |
10:33 | |
奥の宮・行宮跡到着 | 10:36 | 3分 |
奥の宮・行宮跡出発 (→西坂登山道経由・東坂登山口) |
10:54 | |
下山完了 | 12:05 | 1時間11分 |
総登山時間は約3時間でした。
ただし、奥の宮・行宮跡から東坂登山口の下山時、「森林鉄道跡」の案内板がないか探索した時間を含みます。
そのため、正味の登山時間は2時間強かな、と思われます。
(なお、昼食は下山後にとりました)
おわりに
鳥取県琴浦町の「船上山」をご紹介いたしました。
「千丈のぞき」の風情のよさが、一番印象に残った今回の登山。
反面、「森林鉄道跡」に、往時の説明がないのが惜しまれます。
日本史の表舞台となった船上山。
その名声に応じた整備がなされると、より魅力的な史跡になるのでは、と思いました。
しかし、(繰り返しになってしまいますが)人間の歴史・営みといった要素を覗いても、千丈のぞきの景観・雰囲気を始めとして、自然の偉大さを感じられる場所です。
「いわゆる”パワースポット”なんじゃないか?」とも感じたオススメの山でした。
ここまでの御高覧、ありがとうございました。
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