こんにちは。佐々井と申します。
今回、ご紹介するのは、臨済宗のお寺・全生庵の御住職、平井正修さん著「禅がすすめる力の抜き方」です。
副題は、「心をゆるめればうまくいく」です。
本書は、禅の目的である「自分が自然体で生きること」に有用な「禅」のエッセンス・エピソードがふんだんに盛り込まれた1冊になっております。
本書をオススメしたい方はこちら。
なお、本書は、平井正修さんの著作「力まない」を再編集のうえ、改題されたものです。
それでは、本書の内容について紹介させていただきます。
本書の伝えたい事と、その書かれ方
何が起きても、心にゆとりを持ち、
頭は冴えわたり、
体は己の思うように動く。
世間の価値観、誰かの意見に振り回されず、
己のなすべきことを淡々とこなして生きていく・・・
いわゆる「力みのない生き方」
こうした「自然体」にアプローチする1つの方法が、「禅」です。
本書は、「禅」が教えてくれる、「自分の人生」に必要なエッセンスやエピソードを分かりやすく解説してくれています。
著者の修行で体験したこと、師から教えてもらったことも紹介されており、「昔の人はこう考えた」だけでなく、「今を生きる人が実際にこう感じた」という切り口の話も多いです。
「禅語」という、禅の用語も多く出てきます。
しかし、解説書や教科書のようなカタい表現は用いられておらず、「禅」について知識がゼロな人も読み進められます。
むしろ、「禅」について知ることがない方にも、是非読んでいただきたい!
本書の章立て・・・人生の「力の抜き方」の紹介は、4段階で記述されています。
1.「今、ここ」だけに心を向ける。「焦らない」こと。
2.「こだわり」を捨ててみよう。「心の自由」を手に入れる知恵。
3.気にしない、考えすぎないヒント
4.こう考えれば、人生は難しくない
本書では、座禅≒瞑想の具体的な方法などの紹介はありません。
座禅≒瞑想の効能や必要性は、幾度となく紹介されていますので、実際の仕方が知りたい方は、本書以外で知る必要はあります。
当ブログでも、禅宗の御住職から教えていただいた座禅の方法を記事にしておりますので、よろしければお役立てください。
ざっくりとおさらい。「禅」とは
著者は、仏教の1宗派である「臨済宗」の僧侶です。
「座禅」を重んじる「禅宗」の1派でもあります。
江戸時代末期、江戸城無血開城で奔走した山岡鉄舟が建立した「全生庵」の御住職でもあります。
その著書が紹介する「禅」とは・・・
まず、前述のとおり「座禅」という修行を重んじます。
足を組んで静座し、瞑想する修行ですね。
この座禅、「悟りを得よう!」とか、「無の境地に達するんだ!」という、「なにか」をつかみ取る行為ではない、といいます。
逆に、座禅は「手にしていたものを手放す」行為だそうです。
それまでにないものを身につけることで「何ものか」になろうとするのではなく、むしろ身につけていたものを捨てて、赤ん坊のような本来の姿へ帰る。
そこに、禅の本質がある。そう著者は言います。
この考えから、禅が目指すのは「人から褒められる立派な人間」ではなく、「ただの人間」なのです。
花は季節になれば、ただ咲き、そして散っていく。
川は海に向かって、ただただ流れていく。
それと同じように、「人間はただ生きる」。
すなわち、心や身体から余計な力みを抜いて「自然体」で、人生のいろんな大小のイベントに臨んでいくことが大切です。
心や体をゆるめる、ほぐす、やわらかくする、受け流す、手放す。
緩急、強弱、硬軟のバランスをとっていく。
良いこと、悪いことの「なにか」があっても、「ふだんどおり」に立ち返っていく。
「禅」とは、そういう思想であり、生き方の指南なのです。
本書のタイトル「力を抜き方」も、こうした禅の考えからきています。
収録の1エピソードを紹介「『自分はこんな人間』は本当にそうなのかな?」
人間、誰しも「セルフイメージ」というものを持っているかと思います。
「自分は、○○な人間だ」というイメージです。
真面目、親切、小心者、抜け目がない、などなど・・・
もしくは、「こうあるべし」という自分。
勤勉、紳士、努力、雄弁、などなど・・・
ところで、仏教には「般若心経(はんにゃしんぎょう)」という有名なお経があります。
そのなかに、「色即是空(しきそくぜくう)」という言葉があります。
「いっさいの存在は『無=ないもの』である」という意味です。
そして、その対句として「空即是色(くうそくぜしき)」という言葉もあります。
これは、「『無』があることで、無という『存在である』」という意味です。
すなわち、万物の「本質」は「ある」ようで「ない」。
しかし、「ない」ようで「『ない』がある」。
禅ではそういわれていますが、これでは頭がこんがらがってきますね。
そこで、「そこに今『ある』ものは、いずれは『無い』に変わっていく」と捉えましょう。
すなわち万物は「常に有るものは無く」、『無常』なのです。
人間も、「○○と決まった人間」というものはありません。
セルフイメージというものも、いきすぎると「こだわり」を生み、それが、その人の視野を狭め、思考を限定していきます。
それは、その人の「伸びしろ」や「可能性」を限定することに繋がってしまうのです。
「自分の殻」という言葉もありますが、そのような「殻」は感じることがあっても、それは「あるようで無い」ものなのです。
過剰なこだわりや、心のかわばりは取り払って、より楽に自然体で生きてみませんか?
おわりに
「禅がすすめる力の抜き方」をご紹介してきました。
いかがだったでしょうか。
本書では、「不立文字(ふりゅうもんじ)」という言葉も紹介されています。
言葉=文字では、全ての意志を伝えきれない、という意味です。
言葉の限界はあるが、言葉にしないと伝える術がない。
このジレンマに、この本の内容も逃れられていないであろう、と著者は言います。
しかし、それでも、なにかしらの人生の指針を求めたいならば、こうのような示唆に富む1冊を読むのが良いかと思います。
ここまでの御高覧、ありがとうございました!
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