(書籍紹介・要約)禅の言うとおりにやってみよう【星覚】

佐々井の本棚

月に1回、禅寺で座禅を組んでいる佐々井です。

 

今回、御紹介する書籍は、星覚(せいがく)さん著・「禅の言うとおりにやってみよう」です。

星覚さんは、お寺で修業を積まれ、海外の各地で禅の教えを伝えているお坊さんです。

本書では、日々の暮らしで直面する問題に対して、「仏教的視点=禅の作法からの視点」から見た解決法を44点ほど紹介されています。

 

本書をオススメしたい方はこちら。

仏教的な視点からモノゴトをみることに興味を持っている方
人生の悩みに、小さなところから、具体的なアクションを起こしたい方
マインドフルネスに興味がある方
それでは、御紹介していきます。
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本書の構成・テイスト

この本は、禅の作法から、日々の暮らしを変えていくための本です。

 

仏教用語は出てきますが、やさしくかみ砕いて説明されており、「仏教っていわれてもピンとこない」方にも、分かりやすく書いてあります。

また、物事に対するアプローチが、仏教的なため、仏教のしきたりや作法が多々出てきますが、大丈夫。

そのしきたりや作法のやり方も、一つ一つ、実際に行えるように説明があります。

著者曰く、「禅の教えは『実践あるのみ』で『理屈』は教わりません。」とのこと。

このことから、本書は「■■という問題があるとすると、仏教では、●●という作法があって、その作法をすることで心が整いますよ~」というテイストです。

「こういった理屈を基に、●●という作法があって、心が整っていきますよ」という論法ではありません。

 

心が乱れた場合は、理詰めで解決策を考えることはせず、身体の調子を整えることで、心も整うようアプローチするのが「禅の教え」です。

堅苦しく考えることなく、本書を読んで、生活に取り入れることができそうなことから、実際に取り組んでいく。

そんなスタンスで読んでいく本ではないかと思います。

 

そして、この本の内容は、昨今、認知され出した「マインドフルネス」にも通じることがかかれていたり、キリスト教でのエピソードも交えるなど、「仏教一直線」な硬さもありません。

そのため、「宗教の宣伝臭」がすることはなく、気軽に手に取れる本です。

本書は、第1~5章の5つで構成されており、それぞれの章で取り扱うテーマが分かれています。

それぞれの章から、1点ずつの「問題の解決方法」を紹介させていただきます。

 

 

第1章「今日からできる毎日の禅」10点

第1章は、「『禅』という考え方に親しむ方法」がテーマです。

そして、このテーマに関する禅の作法として紹介されているのは10点。

そのうちの1点を御紹介します。

 

Q.同じような忙しい毎日を繰り返している中で、どうやったら安らぎの時間をつくれるか?

 

A.『禅の教え』から考えるに、日常の「なんでもないこと」を「儀式」にしてみましょう

禅寺では、座禅はもちろん、食事、掃除、トイレ、洗面にいたる全ての挙動に作法が定められています。

一見、きゅうくつな決まり事ですが、「なんでもない行為」の一つ一つ、一挙一動に意識を向けることで、「今」を感じることができます。

 

例えば・・・

・朝、決まった手で、決まった方向にカーテンを開けて朝日を拝む

・食事やお茶の前後に、テーブルに向かって姿勢を正して合掌一礼

・掃除のときは、いつも決まった場所を、決まった掃除用具で、決まった方向に掃除を始める

などなど

普段、「無意識でなにげなく行っている行為」を「儀式」として行うことで、「我に返る=自分の存在を感じる時間」となるのです。

そして、こうした「我に返る時間=気づきを得る瞬間」を体得していくのが「禅」、ということです。

 

また、これは本書には述べられていませんが、いわゆる「マインドフルネス=今を感じる」と通じるものがあるように思えてなりません。

 

第2章「人生を取り戻す小さな禅」9点

第2章は、「仕事や雑事で忙しい日常の中で、自分を取り戻す方法」がテーマです。

そして、このテーマに関する禅の作法として紹介されているのは9点。

そのうちの1点を御紹介します。

 

Q.組織の都合や人付き合いといったことで忙しい。「自分の時間」がなく、人生に不安を感じる

 

A.禅の「10分前に暇を取る」作法がおすすめです

禅寺では、なにか行事を行う際は、10分前に集合することが慣習になっています。

忙しい中、さらに、次の作業(行事)が控えているのに、10分「待つ」ことは無駄ではないか?

そう考える方が多いと思います。

しかし、「待つ=暇な時間」は、「暇になりきる」ことで、心に「余裕」を生みます

分刻みのスケジュールをびっちり入れて、「無駄な時間」を排除する毎日では、「忙しい=心を亡くす」ことになります。

現代人は、とかく競争社会であります。

「忙しい、心を亡くした自分」に安心し、「暇な自分」に不安を感じることもあります。

「暇=悪」ではありません。

スケジュールに余白を作り、その一瞬一瞬を「自分の時間」として感じ、「自分の人生」を積み上げていきましょう。

 

 

第3章「人間関係をなめらかにする禅」9点

第3章は、「人間関係を良好にする方法」がテーマです。

そして、このテーマに関する禅の作法として紹介されているのは9点。

そのうちの1点を御紹介します。

 

Q.相手のことを思いやるには、どうしたらよいか?

 

A.相手と自分が「いつも相通じるのが当然」と思わないようにすること

 

禅寺で修行の際に、内線電話を使う際には、必ず「お電話で失礼致します」と断りを入れてから通話するそうです。

インターネットやSNSが発達した現在、通信したい相手とダイレクトに、リアルタイムに繋がるのは不思議なことではない、と思われています。

しかし、電話もなかった時代、相手が要件を自分に伝えたい場合、

1.相手が自分を訪ねてくる

2.相手が自分の都合(対応可能か)伺う

3.2の確認があって、初めて要件が切り出せる

といった手順が必要でした。

「昔は~」とか関係ない!・・・というのは簡単ですが、今のSNSやインターネットの速さに慣れていると、上記の手順をすっ飛ばして、相手にコンタクトをしていることに気づきません。

 

自分には自分のペースがあり、相手には相手のペースがある

それを踏まえたうえで、意思疎通を丁寧にはかったうえで連絡を取り合う。

そういった「大前提」があることを認識して、人と付き合うように心がければ、良好な人間関係を築くことができるでしょう。

 

 

第4章「壁を乗り越える禅」7点

第4章は、「人生の中で『壁』を感じた時に、どう乗り越えていくか」がテーマです。

そして、このテーマに関する禅の作法として紹介されているのは7点。

特に、本ブログで、よく取り上げる「お金の話」に関することが、7点のうち半数の4点も述べられています。

ブログ主的に、興味深い章でした。

お金に執着するのは良くないよ~」ということも書いてありすし、それだけでなく「お金は大切なんだよ」ということも書いてあります。

なので、「お金儲けは悪!」みたいな極端な話はありません。

むしろ、「お金の概念」を再確認できる章です。ぜひご一読されたい。

さて、そのうちの1点を御紹介します。

 

Q.人生設計や仕事の上で、計画通りに事が進まない。どうしたらいいか?

 

A.「無計画な計画」をたてましょう

 

「無計画な計画」ってなに?

それは、「計画通りにいかないことを前提の計画」のことです。

「縁」という言葉もあります。

計画が走り始めた後に、ふと生じた「縁」で軌道修正が必要になることもあるでしょう。

スケジュールがガチガチな計画ではなく、「あいまいさ」を残した「計画」を考える。

これが、結局、硬軟のバランスがいい「計画」なのではないでしょうか。

 

 

第5章「身体と仲よくなる禅」9点

最終章では、「身体を通して、自分の内面と仲よくなる方法」がテーマです。

そして、このテーマに関する禅の作法として紹介されているのは9点。

そのうちの1点を御紹介します。

 

Q.不安を感じて心がザワザワします。どうしたら静められますか?

 

A.まずは、姿勢を整えましょう

 

「禅」で有名なエピソードを御紹介します。

インドから中国に「禅」を伝えた達磨法師(だるまさん)と、その弟子のやり取りです。

弟子「心がいつも不安です。どうしたら安心できますか?」

だるまさん「その心を持ってきなさい。安心させてあげましょう」

弟子「心を探しましたが、見つかりません。ありませんでした。」

だるまさん「よし。もう安心だ」

このように、「心」は目に見えないし、物質的に取り出せたりできません。

それゆえに、「目に見えないもの」が「不安!」や「怖い!」と騒ぎ出すと、どう治めていいか分かりません。

 

禅では、「目に見えない心を鎮めるには、目に見える身体から落ち着かせていきましょう」というアプローチをかけます。

 

1.身体・姿勢を整える

2.息・呼吸を整える

3.すると、心も整っていく

身体を整えることに集中することで、心がニュートラルな状態に戻ってきます

この方法を定型化したのが、瞑想であり、座禅です。

座禅のやり方は本書でも紹介されています。

 

このブログでも、本書の著者と同じ曹洞宗の御住職から教わった「座禅の方法」を紹介させていただいております。

よろしければ、そちらの記事もご一読あれ。

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おわりに

「禅の言うとおりにやってみよう」について御紹介してきました。

いかがだったでしょうか。

 

修行寺での作法が書かれているので、ストイックと思われるものもあるかもしれませんが、世俗の我々の生活に取り入れられるものが大多数だと思います。

(繰り返しですが)ストレス社会と言われる今、注目を集める「マインドフルネス」にも通ずるものがあり、仕事・育児に忙しい方には、是非お勧めしたい1冊です。

ここまでの御高覧、ありがとうございました!

 

 

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