家は3LDKの賃貸マンションの佐々井です。
今回、御紹介する書籍は、ドミニック・ローホーさん著・原秋子さん訳「屋根ひとつ お茶一杯」です。
副題は「魂を満たす小さな暮らし方」。
この本は、よく成功者の家としてイメージされる「大豪邸」へのアンチテーゼというべき本なのかもしれません。
「薄暗く、狭い家もイイよ!」ということを、いろいろな視点から執筆されています。
著者の方は、フランス生まれですが、日本で禅の修行や墨絵を習得するなど、日本文化を学ばれた方です。
ゆえに、日本の伝統家屋についても造詣が深く、本書においても随所に、その豊富な知識が垣間見えます。
さて、それでは、なぜ「広く、明るく、豪華な大邸宅」より「小さく狭い家」の方が良いのでしょうか?
さっそく、御紹介していきますね。
「小さな家」で味わう贅沢
本記事の冒頭でも書きましたが、「今よりもっと広い家」に憧れている人も多いことでしょう。
しかし、「あえて、小さい家に住む」人もいるのです。
そして、著者は「小さい家に住む人」で、その利点を数多く述べられています。
その一端を紹介させていただきます。
「小さな家」の主人は「モノ」ではなく、「自分」
「広い家・広い空間」に住むことで陥りやすい罠があります。
・防犯・光熱費・ローンの支払への金銭的な苦労
・インテリアにこだわれるがゆえの、果てしない物欲の発生
・掃除・メンテナンスといった作業の増加による時間の不足
これでは、大豪邸の本当の主人は「人間」なのでしょうか?
モノや設備が、人間を振りましているように見えてこないでしょうか?
「狭い家」に住むと、これらの重荷を背負うことも有りません。
狭い家は、家の主人たる「自分」の手や感覚がすみずみまで行き届きます。
すると、モノゴトをシンプルに考えることができ、いろいろ余裕が生まれます。
この「余裕」こそが「狭い家」の利点なのです。
「小さな家」が生む余裕のメリット
余裕についていえば、特に「時間」が生まれます。
人生の中で「時間」は有限です。
自分の人生を、家の掃除・整理整頓・修理・改善に費やすのは少ない方が良いと思いませんか?
自分の思い通りになる時間が多い方が、人に優しくなれますし、幸せを感じられます。
また、「家は安らぎの場所」です。
家の大小で、いろいろな「余裕」に差が出るなら、余裕がある方が「安らげる」ことでしょう。
そう。大きすぎる家は、その様々な要因から、持ち主を時間・精神の安らぎからエネルギーまで奪って行ってしまうのです。
「安らぎの場所」は、言ってしまえば「自分だけの空間」を持つことができればよいのです。
禅には「畳は座るために半畳、寝るために一畳あればよい」とあります。
世俗に生きる私たちに、これは厳しいでしょうが、極論、これで人間、事足りるものなのです。
次に紹介するメリットは「自由」です。
家が小さければ、引っ越しするにも(家に収まっている家財から言って)身軽です。
その「身軽さ」は、ある意味「自由」とも呼べます。
また、人間が持つ欲望「見栄からくる物欲」から解放され、「心の自由」が得られます。
「見栄を張らない自分の暮らし」が、つつましく送れるのが小さな家、というわけです。
モノに縛られない生き方、してみませんか?
「小さな家」の様々な「美」
前項では、大邸宅に無い、狭小な家のメリットを述べました。
人生の「主導権」と「余裕」が家の持ち主にある、という2つですね。
この項では、狭小な家の「美しい点」を紹介していきます。
狭小な家は「醜」なのか? いや、「美」である
人間、誰しも「贅沢」はしたいもの。
狭小な家に住む人間は、「贅沢」を諦めないといけないのか?
答えはNoです。
「狭小な家=安物・低層階級」ではありません。
そのコンパクト感、効率の良さ、洗練されたデザイン、オリジナリティーといった点から、むしろ「機能美」を感じる狭小な家もあります。
本書では、世界各地にある「美しい狭小な家」が紹介されています。
SDGs的な可能性を秘めた「狭小な家」の美点
現在、都市部への人口集中による「都市部の住居不足」、結婚率の低下や高齢化の影響による「おひとり様世帯の増加」が懸念されます。
「誰一人取りこぼさない社会の実現」に欠かせない住居問題対策。
こういった問題を解決するのは、「狭小だが効率的な生活が送れる家」なのでしょう。
「明るさ」の逆・「薄暗さ」の美は「日本の美」でもある
「日当たり良好!」は、よくある不動産のうたい文句ですね。
しかし、日本の伝統的な建物の室内は、直射日光を避けた薄暗い部屋が多くあります。
それはなぜか?
それは、薄暗い方が、人も物も美しく見えるからです。
昔の照明器具である「行灯(あんどん)」や「ガス灯」のゆらめきは、いっそう、周りにあるものの優雅さ・美しさを引き立てたことでしょう。
イギリスの伝統的な家屋にも、同じコンセプトの家屋があります。
「明るい」だけが「美」ではないのです。
狭くても「庭」は持てる。坪庭、盆景、ミニチュアガーデン・・・
日本の「坪庭」、中国の「盆景」、欧州の「ミニチュアガーデン」・・・
狭小な家でも、その小世界を作り出すことができます。
箱庭に込められ、表現された「美」の世界に飛び込んでいくのも、また一興というものです。
ライフステージにあわせた「小さな家」を持つ人の「身軽さ」
さて、本記事では、狭小な家を褒め、大邸宅のデメリットばかりをフォーカスしてきました。
(まぁ、本書の内容をまとめているだけなのですが・・・)
では、理想の住まいは存在するのでしょうか?
答えは、イエス・ノー、両方とも答えることができます。
それはなぜか?
それは、入居した時点で理想的な住まいも、時がたつと「理想の住まいの条件」が変わっていくからです。
いわゆる「ライフステージ」にあわせた家が「理想」になっていきます。
結婚、出産、子どもの独立、伴侶との別離、などなど。
こういった「変化」に柔軟に対応しやすいのは、前述しましたが「狭小な家」のほう、というわけです。
住人であり、家の主である「自分」の「今」にフォーカスして、考えていくようにしましょう。
おわりに
「屋根ひとつ お茶一杯」という書籍を紹介してきました。
いかがだったでしょうか。
実は、「本書籍の内容の1/3を紹介できたかどうか?」という記事になっています。
それはなぜか?
本書では、
「家での孤独は悪くない。むしろ人生の喜び」
「狭小な家に住むためのインテリアの知恵」
「幸福な生活をするための、住居的な視点からのお金の話」
「幸せなシンプルな生き方(具体例として住居の関係の話多数)」
といった内容が述べられています。
本記事では、「狭小な家も悪くないよ」というテーマの内容にフォーカスを当てて紹介させていただきました。
この書のすべてのエッセンスは、実際に手にとって読んでいただければと思います。
ここまでの御高覧、ありがとうございました!
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