(書籍紹介)休むことも生きること【丸岡いずみ】

書籍紹介

この本は、キャスターだった著者が「うつ」を発病してから寛解するまでを紹介する本です。

(※うつ病などでは、病状が治まることを「完治」と言わず「寛解」といいます)

 

誰しも発病する可能性があるという「うつ病」。

そして、「うつ病」は発病に至る経緯や経過は、人それぞれ。

ゆえに、うつ病の闘病記は、数多く出版されています。

本書は、その1つです。

日本テレビのキャスター兼記者だった著者は、いかに「うつ病」と向き合ったのか。

著者なりの闘病生活の経緯と、うつの発症兆候などの経験則をまとめた1冊です。

本記事では、本書について簡単にご紹介します。

 

スポンサーリンク

著者が「うつ」を発病して寛解するまで

日本テレビの記者兼キャスターとして活躍していた著者。

そんな著者は、2011年に発生した東日本大震災において、過酷な取材をこなす中で、大きなストレスを抱えていきます。

仕事大好き人間だった著者は、そのストレスを実感せずに仕事に取り組み続けるのですが、その無理から身体に異常が発生します。

不眠、食欲減退、下痢、湿疹……

内科を受診し、薬を処方してもらいますが、一向に良くなりません。

最後には、希死観念……「死んでしまいたい」と考えるようになります。

ついに、うつ病を発症したのです。

しかし、身体に支障をきたしながらも、表面上はバリバリ働いていた著者。

周囲は、著者の異変に気づきません。

無理を重ねるうちに病状は悪化していき、ついに「山」や「川」といった漢字にルビを振るまでに認知機能が低下。

ようやく、職場に休暇を申し出ます。

職場の理解もあって、2週間の休暇に入ります。

東京から実家に移り、両親に支えられて闘病生活に入ります。

その後、残念ながら状況は改善せず、診断書により長期休暇に移行。

ところが、精神科から処方された薬を飲まなかったことから、さらに悪化(理由は後述)

ついに、過呼吸を起こして強制入院となります。

入院後は、きちんと投薬治療を受けたことによって病状は改善

2週間の入院生活ののち、退院して自宅療養に移り、自分の生き方を見つめなおします。

今の仕事をやめ、新しい世界に飛び込みたいこと。

結婚願望がなかったが、闘病を支えてくれた人と結婚すること。

 

そして、発症のきっかけとなった東日本大震災から1年半後。

医師からは、仕事をしても大丈夫と言われるまで回復。

結婚もし、それを機に日本テレビを退職。

価値観を変えて、次の人生に踏み出したのでした。

 

著者の経験から見た「うつの兆候と対策」

本書では、著者自身の闘病経験と発症前後に学んだことから、「うつの兆候と対策」が紹介されています。

本記事では、簡単に列挙します。

 

1.仕事好きで頑張り屋で過労に気づかない

【対策】ふだんから相談したり、弱音を吐ける人を見つけておく

 

2.湿疹など、体の表面に異常が現れる

【対策】原因不明の皮膚疾患が出た場合、ストレスを自覚する

 

3.よく眠れない or 寝すぎる

【対策】かかりつけ医に気軽に相談する。睡眠薬も適切に使えば怖くない

 

4.胃や腸の不調が続き、薬が効かない

【対策】内科で改善しない場合は、精神科の受診を視野に入れる

 

5.精神的な不調や診断を周囲に隠す

【対策】重症化する前に会社などに相談する

 

6.夏バテが長引く場合、うつ病を疑う

【対策】不調の原因を「夏バテ」だけに思いこまない

 

7.仕事ができなくなるなど、集中力や思考力が低下する

【対策】すぐに休暇を取り、精神科 or 心療内科を受診する

 

8.精神疾患の薬に偏見・不信感がある

【対策】うつは脳の病気なので、投薬治療は有効であることを知る

 

9.「死んだら楽になる」と思い始める

【対策】まずは、医師に「死にたい」と伝える

 

10.薬が効いて快方に向かうと油断する

【対策】自分の判断で薬をやめたり、仕事を再開しない

 

以上の条件のうち著者が当てはまったのは、まず、仕事好き人間で薬が大嫌いでした。

次に、精神疾患の知識はありましたが、正しくない知識や思い込みもあり、投薬治療を拒絶しました。

その結果、病状悪化して強制入院まで至ったのです。

 

ただし、悪い条件が重なっただけではなく、著者にとって良い条件もありました。

精神疾患の知識から、自分が正常な状態でないことを察知できたこと。

・両親や(退職時に結婚した)夫が、病気に理解があり冷静に対応してくれたこと。

・職場も病気に理解があり、療養に専念させてくれたこと。

これらが、著者の回復を支えたということです。

 

おわりに

著・丸岡いずみ「休むことも生きること」を簡単ですが、ご紹介いたしました。

 

ブログ主は10年以上、うつ病を患っています。

その経験を念頭に本書を読みましたが、その闘病の経過が細かくまとめられていて驚きました。

ブログ主は、発症前後から症状が落ち着くまでの記憶がほぼ欠落しているのです。

苦しすぎて、記憶にフタがされているのかな、と思っています。

それゆえに、本書の著者の記憶、記録や時間をさかのぼっての情報整理に驚嘆しています。

そして、本の書き進め方も端的で、わかりやすくまとまっています。

冗長な部分を感じさせず、文章を読むのがおっくうに感じる人も読み進められるのではないでしょうか。

「うつ」に関する情報だけでなく、物書きとして大いに参考になった、そんな本になりました。

ちょっと趣旨違いのですが、これがブログ主の感想です。

ここまでの御高覧、ありがとうございました!

 

関連記事(書籍紹介)

(書籍紹介)クロミの『歎異抄』【朝日文庫編集部】
この本は、あたりまえで大事なことを改めて再認識させてくれる1冊です。 『歎異抄(たんにしょう)』とは、鎌倉時代に仏教僧・唯円(ゆいえん)によって書かれた書物です。 唯円は、浄土真宗の開祖・親鸞(しんらん)の弟子で、親鸞の...
(書籍紹介)コレステロール・中性脂肪がぐんぐん下がるコツがわかる本【野村喜重郎】
この本は、コレステロール・中性脂肪が多すぎる原因、その悪影響、そして減らし方がわかる1冊です。 血液検査で気になる「コレストロール」「中性脂肪」。 よく健康の話題で聞く単語ですね。 では、その詳しいことはご存じでし...
(書籍紹介)明日はきっと、いい日になる。【PHP編集部】
この本は、明日をより生きやすくする考え方、心の持ち方を教えてくれる1冊です。 月刊『PHP』に掲載された18人の著名人の取材記事を書籍化したものです。 いずれの記事も『弱い自分やストレスとの付き合い方などの処方箋』のよう...

コメント

  1. 匿名 より:

    鬱々した時は、
    やっほーーーーーーーー!!
    って叫んでます。一緒にどうですか

    マイナスをプラスにしなくていいんだよ。
    地平線みたいにずっと、真ん中でいたらいいんだよ。

タイトルとURLをコピーしました